最近のネット記事には、「専門家による記事監修」がついているものも多くなっています。
記事の信頼性を担保するために監修が導入されているものの、実際に読者は記事監修があることで、「この記事は信頼できる」と感じているのでしょうか。
今回は全国の男女513人を対象に「専門家の記事監修に関する意識調査」を実施。
「専門家による記事監修があると信頼度が上がるか」や「記事監修がほしい記事のジャンル」などについて聞きました。
- 調査対象:全国の男女
- 調査期間:2024年11月18日~28日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:513人(女性318人/男性195人)
- 回答者の年代:10代 1.4%/20代 13.8%/30代 31.4%/40代 30.6%/50代 16.6%/60代以上 6.2%
専門家による記事監修があると信頼度が上がる人は88.1%
全国の男女513人に「専門家による監修があると、記事の信頼度は上がりますか」と聞いたところ、「とても上がる」「やや上がる」が合わせて88.1%でした。
専門家による監修があると、記事の信頼性が高まるとわかります。
一方「上がらない」と答えた人からは、「自称専門家が多いと感じる」「専門家が信頼できる人かわからない」といった回答が寄せられました。
記事の信頼性を高めるためには、ただ監修をつければいいというわけではなく、「専門家の実績・知名度」や「専門家についての情報開示」も必要だとわかります。
専門家の記事監修があると信頼度が上がる理由1位は「正確だと思える」
「専門家による記事監修があると信頼度が上がる理由」の圧倒的1位は「正確だと思える(33.3%)」でした。
2位「権威性がある(16.4%)」、3位「記事の品質が高そう(7.2%)」が続きます。
専門家監修が入ることで、記事の質が上がると考えている人が多くなりました。
また「無記名記事だと無責任だが、名前を出して監修していれば責任の所在が明確」「既存記事をつぎはぎしただけの記事ではない、と思える」という声も。
つまり従来のネット記事の品質への不満や疑問から、記事監修に期待している人が多いことも読み取れます。
1位 正確だと思える
- 無知な一般人の意見はあてにはならないですが、研究をしている専門家であれば、より正しい情報をもたらしてくれると思います(20代 男性)
- 専門家が監修していると、間違いないんだなと思う(30代 男性)
- 専門的な知識のある人によって監修されたものであれば、間違ったことを言っていた場合には修正され、正しい知識で書かれると期待できるからです(40代 女性)
1位は「正確だと思える」でした。
専門家による記事監修では、専門家が記事をチェックして間違いや誤解されそうな表現を修正します。
そのため専門家監修が入ることで、正確な記事になると考えている人が多くなっています。
間違った内容や古い内容の記事が溢れている中で、専門家が監修していれば「正確だ」と安心できるのですね。
専門家が監修した記事については、まず正確性を期待している人が多いとわかります。
2位 権威性がある
- 専門家が監修という言葉がつくだけで、信用できそうだと思うから(30代 女性)
- 専門家が写真付きで記事監修していると、お墨付きみたいな感じで信頼できる(40代 女性)
- やはり各分野で確固たる実績をもつ専門家の言葉は、重みがあると思う(50代 男性)
「権威性がある」が2位。
社会的に信頼され影響力もある専門家が監修したことによる、「お墨付きの効果」を重視している人も多くなりました。
専門家が監修しているだけで、「深く考えなくてもなんとなく信用できそうだ」と感じる人も多いとわかります。
専門家自身が社会的に認められている立場にあるからこそ、記事に権威性を与えられます。
3位 記事の品質が高そう
- より具体性を増して深い記事になるから(30代 男性)
- 悩みがきちんと解決しそう(40代 女性)
- 専門家による厳しいチェックがなされていれば、質の高いコンテンツが提供されているだろうと思えるからです(40代 男性)
3位は「記事の品質が高そう」です。
専門家が記事を監修することで、専門家の知識や経験が記事に反映され、記事の品質が高まると考えている人も多くなりました。
専門家「監修」の場合、実際に記事を書いているのはライターで、専門家自身が執筆していないケースも多いです。
しかし監修するだけで記事のレベルが上がると感じる人も多いことがわかります。
実際に監修者の知見を記事に盛り込みたい場合には、「監修者のコメントを掲載する」などの方法が検討されます。
4位 責任の所在がわかる
- 専門家の名前が記載されるため、無責任なことを書けなくなるため(20代 女性)
- 記事の監修をした人は自分の名前を表に出すので、記事の内容に責任をもっていると思うから(40代 女性)
- 記事監修があると、書かれた記事に対して責任の所在がはっきりとします(40代 男性)
4位は「責任の所在がわかる」です。
ライターが作成した記事は無記名であることも多く、読者が「発信者がどこの誰なのか」を特定できません。
しかし記事監修の場合は、一般的に監修した専門家の名前や肩書が掲載され、監修者が記事内容に責任をもつかたちになります。
「責任を負っているのだから、適当なことは言えないだろう」と考え、専門家監修された記事を信用している人も多くなりました。
5位 手間がかかっている
- 適当にやってはいないかなと思います(20代 女性)
- 外部の専門家に監修を依頼していることで、サイト運営者のコンテンツ作成にかける姿勢の真剣さが伝わってきます(40代 男性)
- 監修しているという一文があれば、ちゃんと記事作りをしている感じがする(50代 男性)
5位は「手間がかかっている」です。
ライターが描いた記事をそのまま掲載するのではなく、「専門家による記事監修」というひと手間をかけることで信頼性が高まると考えている人も。
「わざわざ手間をかけているのだから、いい記事なのだろう」と思うのですね。
また記事監修という手間をかけることで、記事そのものだけではなく、サイト運営者の誠実さや姿勢が評価されることもわかりました。
専門家について知りたいことは「実績」
「記事監修をしている専門家についてのどんなことを知りたいか」を聞いたところ、「実績(56.3%)」と答えた人が半数を超えました。
2位「専門分野(41.5%)」も多くの人が挙げています。
- 学歴よりは経験値を知りたい。医師であれば勤務先の病院名以外に、「講演実績」「本を執筆している」などの活動内容(40代 女性)
- 今までの監修実績と、所属する団体の名称。また所属する組織内でのポジション(60代以上 男性)
- 専門分野における実績と、専門メディアなどに出ているかどうか。メディアに出ている人だと安心感と信頼性がある(20代 男性)
- 学歴はあてにならないので、専門分野と保有資格(30代 女性)
- 最近の実績や活動状況など。知識が最新であることも重要なので(30代 女性)
- 実績や「現在何をしておられるのか」が知りたいです。監修ばかりで、表立って何もされていない方だと「名前だけ貸しているのか?」と不安になります(30代 女性)
複数の項目を挙げた人も多くなっていることから、専門家については複数の情報を組み合わせて判断したいと考えている人が多いとわかります。
例えば「実績と専門分野」「学歴と保有資格」などです。
また学歴や資格を重視する人もいましたが、専門家が実際にどんな活動をしているのか知りたいという人が多くなっています。
活動内容や実績についても、「最近の活動内容」「直近の実績」という声が寄せられており、現時点で積極的に専門分野における活動を行っている人かどうかも重要だとわかりました。
経験に裏打ちされた専門知識を求める人が多いとわかります。
専門家の記事監修が必要だと思うジャンルは「医療」
「専門家の監修が必要だと思うジャンル」を聞いたところ、「医療(72.3%)」が飛びぬけてトップになりました。
- 医療、食事などの生命に関わる記事は必須だと思います(40代 男性)
- 医療、法律。医療については、時と共に変わっていくから。法律については、最新の事例があると思うから(50代 女性)
- 医療、美容医療、健康に関して。でたらめな記事が多いと感じているため(30代 女性)
- 流行のダイエットで体調を崩すようなことも聞くので、ボディメイク関連も専門家の意見が入っていると安心します(20代 女性)
- 医療、金融、サプリなどちょっとまがい物かどうかぱっと一瞥しただけでは判断しづらい領域です(30代 男性)
- 医療および健康関係、科学技術関連で必要だと感じます。「エセ医療」や「エセ科学」のために、適切な医療措置が妨害されてしまったり、真っ当な科学研究およびその成果が浸透しない場合があるから(20代 男性)
医療をはじめ、健康やダイエットなど、身体や命に関わる分野については、専門家監修が重要だと考えている人が多くなっています。
また「法律」「マネー」については、間違った知識を取り入れることで大きな金銭的損失や社会的な不利益を被ることも。
リスクを減らすために正確な記事を読みたい人が多いのでしょう。
「間違った情報によるリスクが大きい分野」については、専門家を求める人が多いとわかりました。
まとめ
専門家による記事監修は、とくに健康や財産に関する分野で、読者からの信頼を獲得するために有効な手段であることがわかりました。
ただしアンケート回答からわかるように、専門家監修をつけても、専門家個人に対して「信頼に値しない」という評価をされてしまうことがあります。
上記のような場合には、権威性が高まらず、専門家監修をつけたことによるメリットが少なくなってしまうと危惧されます。
専門家個人に対する信頼性を高めるためには、読者のニーズに応えるかたちで、専門家の情報をできるだけ多く開示することが大切だと言えるでしょう。
最後に当記事の監修者、クチコミコンサルタントの南保志氏からの総括コメントを紹介しているので、参考にしてみてください。
今回のアンケートでもわかるように、ユーザーから見た監修記事への信頼は非常に厚くなっています。
特に、AI時代には誤った情報が流布してしまう可能性については専門家の間でも危惧されており、専門家による記事チェックはさらに重要視されていくものと思われます。
同時に、監修記事が粗製濫造されつつあるのも事実。
見せかけだけのマーケティングではなく、ユーザーに信頼できる情報を届けたいというメディア側の姿勢が今後問われるでしょう。
■監修者プロフィール
南 保志氏
クチコミコンサルタント
数多くの報道機関・国立研究機関にもデータ提供を行なう本音の口コミサイトみん評および株式会社マイスタースタジオ創業メンバーの一人。
10年以上にわたって口コミを分析した知見を生かし、100社以上の顧客満足度の改善アドバイスおよびその広報支援を行なう。